
ずんだ餅を知る、味わう。仙台が育てた緑の甘味をめぐるガイド
薄緑色のなめらかな餡が、真っ白なお餅をやさしく包んでいる。それがずんだ餅の第一印象です。枝豆からできているとわかったとき、「こんな甘いものになるのか」と驚く人も少なくないかもしれません。牛タン・笹かまぼこと並ぶ仙台三大名物のひとつとして、いまや全国にその名が知られるようになりました。
ずんだ餅ってどんな食べもの?

宮城県では、正月・婚礼・法事・葬儀など年中行事には欠かさず餅が食べられてきました。そうした文化の中で生まれたのがずんだ餅です。緑色の鮮やかなずんだ餡は、砂糖や塩で味付けされますが、餅に絡めるときは砂糖のみで味付けされることが多いです。
夏から秋にかけて収穫した旬の枝豆を茹で、薄皮を丁寧にむいてからすりつぶし、砂糖と塩を少々加えた素朴で上品な味わいの餡に仕上げます。小豆を煮て作るあんことは違い、枝豆の粒感が残っているので豆の噛み応えも楽しめます。
ずんだは江戸時代からありましたが、甘味のあるずんだが確認できるのは砂糖が出回るようになった幕末ごろのことです。仙台市青葉区愛子の農家の記録に、お盆にずんだ餅を食べたと記した史料が残っています。
「ずんだ」という名前のいわれ

名前の由来には、いくつかの説が伝わっています。甚太という農夫が創作したという説、伊達政宗公が陣太刀の柄で枝豆を砕いた説など、さまざまな言い伝えがあります。また「豆を打つ音(豆ん打)」を表したとの説もあります。
どれが正しいかはわかっていませんが、宮城の土地と人々の暮らしに深く根ざした食であることは確かです。かつてはずんだを作るのに手間がかかるため、子どもたちがさやから豆を取り出す作業をおこなうなど、家族総出でつくっていたといいます。
お盆の供え物から仙台名物へ
枝豆の旬は夏で、かつては夏の風習としてお盆に家族や親戚が集まりずんだを作りました。その際、ずんだ餅は先祖に対する供物でもありました。
本来は夏の料理・お盆の料理でしたが、現在では季節を問わず年間を通して販売・消費されています。近年は基本のずんだ餅以外にも「ずんだ風味のお菓子」や「ずんだシェイク」などの関連商品が増え、ずんだファンを楽しませています。
仙台でずんだ餅に出会える場所
村上屋餅店(仙台市青葉区)
明治10年(1877年)に創業した老舗で、150年近くにわたって営業を続けています。三色餅(ずんだ・ごま・くるみ)が名物で、お餅は柔らかく弾力があり、手作業で作られたずんだ餡は枝豆の風味と絶妙な甘みが特徴です。イートインスペースもあり、仙台市内で「まず一度は訪れたい」と語られることの多い一軒です。
ずんだ茶寮(仙台駅構内)
仙台駅の「ずんだ小径」にある店舗で、ずんだシェイクが人気を集めています。ごま餅やくるみ餅、ずんだ餅は来客用として出されることが多く、駅構内で気軽に手に取れるずんだスイーツは、旅の途中に仙台の味を持ち帰りたいときにも重宝します。
玉澤総本店(一番町店)
仙台には種類豊富な餅料理があり、どじょうを使ったふすべ餅、くるみを使ったくるみ餅、ごま餅、納豆餅、ずんだ餅などが親しまれています。玉澤総本店は仙台の中心・一番町に店を構える老舗で、こうした宮城の餅文化を丁寧に守り続けています。ずんだをはじめ、複数の味を少しずつ楽しめる詰め合わせが贈り物にも選ばれています。
贈り物として選ぶなら
ずんだ餅は冷凍・真空パックで全国発送できる商品も増えており、手土産やギフトにも使いやすくなりました。1947年(昭和22年)、東北地方への昭和天皇の戦後巡幸の際、宮城県ではずんだ餅がほかの郷土食とともに選ばれ、夕食に供されました。長い年月をかけて育まれてきた味だからこそ、贈られた相手に「こんなものがあったんだ」と喜んでもらいやすい一品です。
産地の顔が見えるお菓子を選びたいとき、仙台・宮城のずんだ餅は、その緑色の鮮やかさとともに、東北の暮らしの記憶をそっと届けてくれます。

