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広島スタイルのお好み焼き入門。重ね焼きの魅力と、はじめての一枚の選び方

広島スタイルのお好み焼き入門。重ね焼きの魅力と、はじめての一枚の選び方

広島を訪れると、あちこちから漂ってくる甘いソースの香りに気づきます。広島のお好み焼きは、地元の人がふつうの日の昼食や夕食として食べる、日常に根ざした料理です。観光のハイライトとしてだけでなく、一枚の鉄板を囲みながらその土地の空気を感じる体験として、ぜひ知っておいてほしい食文化のひとつです。

「混ぜない」から生まれる、層の豊かさ

広島スタイルのお好み焼き入門。重ね焼きの魅力と、はじめての一枚の選び方

広島のお好み焼きがほかの地域のものと大きく異なるのは、「重ね焼き」という焼き方にあります。生地と具材をあらかじめ混ぜ合わせるのではなく、薄く延ばした生地の上にキャベツ・もやし・豚肉・そばといった具材を順番に重ねながら焼いていく方法です。

この積み重ねの工程により、キャベツが蒸されてほんのり甘くなり、そばはカリッと香ばしく仕上がります。一枚のなかにいくつもの食感と風味の層があるのが、広島スタイルの醍醐味です。農林水産省の「うちの郷土料理」でも、広島のお好み焼きは「キャベツや豚肉、焼きそばなどを山盛りにし、薄く焼いた卵などを重ねて蒸し焼きにしたもの」と紹介されています。

ソースは濃厚な甘口が定番です。鉄板の上から「ヘラ」を使って食べるスタイルも、広島ならではの食文化の一コマ。鉄板の熱をダイレクトに感じながら口に運ぶ瞬間は、ほかでは味わえない体験です。

一銭洋食から始まった、戦後の物語

広島のお好み焼きのルーツは、大正時代に関西地方で誕生した「一銭洋食」にさかのぼります。水で溶いた小麦粉を薄く伸ばして焼き、ネギや粉がつおなどの具をのせたシンプルな料理で、主に子ども向けのおやつとして親しまれていました。

1945年以降、戦後の食糧難のなかで人々は支援物資として届いた小麦粉を使い、この素朴な料理に手に入りやすいキャベツや海産物を重ねて焼くようになりました。腹持ちをよくするためにそばを加えるお店も登場し、昭和30年(1955年)頃には現在の広島風お好み焼きになったとされています。

こうして生まれた広島のお好み焼きは、農林水産省の統計(2014年経済センサス・基礎調査)によると、人口10万人あたりのお好み焼き店舗数が広島県は全国第1位。焼け野原から再建されたまちの力強さが、一枚の鉄板に宿っているように感じられます。

はじめての一枚、選び方のヒント

そば肉玉

広島のお好み焼き店で「一枚ください」と言うとき、最初の基準になるのがそば肉玉です。中華麺(そば)・豚肉・卵が入ったスタンダードな組み合わせで、重ね焼きの構造がいちばんわかりやすく体験できます。「まず広島を知る」という目的なら、ここから始めるのがいちばんです。

イカ天入り

広島ならではのトッピングとして知られるのが、イカを使ったお菓子「イカ天」です。キャベツの上に砕いて重ねることで、香ばしさとうまみが加わり、味に深みが出ます。広島発祥のお菓子でもあり、地元の人にとってなじみ深い一品です。

牡蠣入り

広島は日本有数の牡蠣の産地でもあります。旬の時期には牡蠣入りのお好み焼きを提供するお店も多く、海のうまみとソースの甘みが重なった一枚は、広島でしか食べられない特別感があります。

お好み村で、屋台の記憶を感じる

広島市中心部にある「お好み村」は、戦後の昭和25年(1950年)頃に新天地広場に屋台が集まったことを起源とし、現在はビルの2〜4階に複数のお好み焼き店が軒を連ねる施設です。各フロアに個性の異なるお店が並び、カウンター越しに職人が鉄板を操る姿を間近で見られます。

各店が自店の味を守りながら競い合う空間は、広島のお好み焼き文化の厚みをそのまま体験できる場所です。どのお店を選ぶか迷うことも、また楽しみのひとつ。屋台村の面影が残るにぎやかな空気のなか、ゆっくりと一枚を味わってみてください。

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