与那国織とは?その魅力と歴史、特徴など詳しく解説

日本の最西端に位置する沖縄県・与那国島。台湾まで約111kmという南の孤島に、500年以上の歴史を持つ織物文化が今も息づいています。
その名を「与那国織(よなぐにおり)」といいます。
島の自然から生まれた染料と、一人の職人が全工程を手がける一貫した手仕事。南国の風土をそのまま布に宿したような温かみある織物は、着物好きのあいだで長く愛されてきました。
この記事では、与那国織の歴史・特徴・4つの種類・産地の現在まで、丁寧にご紹介します。

与那国島という産地|日本最西端の織物の里

与那国織とは、沖縄県の南西諸島・八重山列島にある、日本最西端に位置し温暖な気候の「与那国島」で作られる織物の総称です。

島の人口は数百人ほどの小さな集落ですが、その暮らしの中に、長い歴史を持つ織物文化が脈々と受け継がれています。

与那国織の歴史は古く、500年以上前の1400年代後半には存在していたとされています。朝鮮王朝の書物「李朝実録」には、1477年(室町時代中期)に与那国島に漂着した朝鮮人の見聞録が記されています。

その記録には、当時の島人がすでに機で布を織っていたことが残されており、与那国織の長い歴史を今に伝えています。

1500年代前半には、幾何学的に表現された「与那国花織」が琉球王朝への納貢品に指定され、役人にのみ着用が許可されていました。また、海外との貿易が盛んだった琉球王朝の影響を受け、新たな技術や材料を取り入れながら与那国織は発達しました。

一度の衰退と、復活への歩み

豊かな文化を誇った与那国織も、第二次世界大戦の影響で一時的に衰退します。

戦中戦後は糸の入手が難しいため、漁業網を解いて織っていた時期や機織り自体が途絶えていた時期もありましたが、1979年(昭和54年)には与那国織の復活を目指して「与那国町伝統工芸館」が建てられ、今日まで織物文化を伝え続けています。
1987年には経済産業大臣より国の「伝統的工芸品」に指定され、美しい島を感じさせる与那国織は今も作り続けられています。

産地の小ささゆえ職人の数は多くはありませんが、島の自然と向き合いながら織り続ける姿勢が、与那国織の品質と価値を守り続けています。

与那国織の大きな特徴|一人の職人が全工程を担う

与那国織には、他の織物産地と大きく異なる特徴があります。

与那国織では図面作成から、染料となる与那国島で育つ車輪梅やハイビスカスなどの植物の採取と染め、織りまでを一人の職人が一貫して担当し、唯一無二の織物を作り上げます。
全工程が一人の職人によって約一か月かけて作られます。図面作成や、草木染めのための染料の調達から行うため、世の中で2つとない与那国織ができます。

また、染料にもこだわりがあります。

100%植物由来の染料と、石灰分が多い与那国の水でやわらかい色に染まり優しい風合いになること、与那国島伝統の模様が織られていることが与那国織の大きな魅力です。

完成した布には、伝統的工芸品のマーク・沖縄県織物検査の証・与那国伝統織物協同組合の証紙が貼られ、証紙には職人の名前、使用されている植物の名前も明記されます。
一枚の布に、作り手の名前と自然の名前が刻まれる——そんな誠実さも与那国織の魅力のひとつです。

4つの種類|それぞれの表情を知る

与那国織は、技法や用途によって大きく4種類に分けられています。

与那国花織(よなぐにはなおり)

与那国織の中でも最も生産量の多い「与那国花織」は、格子柄に花模様が織り出される直線的な幾何学模様が特徴です。
直線で格子状に織りあった糸が立体感を出し、小さな花が咲いている様子が印象を与えます。柄によって「ドゥチン花(四つ花)」・「イチチン花(五つ花)」・「ダチン花(八つ花)」という呼び方があります。

かつて役人のみに許された格調ある文様は、現在も与那国織を代表する柄として受け継がれています。

与那国ドゥタティ

「与那国ドゥタティ」は4枚の布を合わせて作られ、与那国の言葉で4つのことを「ドゥーチ」ということから、ドゥ(4枚)タティ(仕立て)と呼ばれています。麻に似た苧麻(ちょま)や木綿から作られ、白、黒、青の色合いが特徴の筒袖の着物で、涼しく動きやすいように工夫されています。かつては島民の日常着として、今でも島の豊年祭などの行事で着用されます。

与那国シダディ

「シダディ」は、綿や麻地などに福木やシャリンバイなどの草木染・泥染などをした色糸を織り込んだ織物です。

手巾(てぃさーじ)とも呼ばれ、実用的な布として島の暮らしに寄り添ってきました。

カガンヌブー(与那国カガンヌブー)

「カガンヌブー」は主にドゥタティと対(つい)で用いられます。細帯の中央には夫婦を表すミウト絣の模様、両端には百足(ムカデ)柄の模様があります。

島の言葉で「鑑の帯」を意味するともいわれ、絣模様の繊細な美しさが際立つ一品です。

産地を訪ねる|与那国町伝統工芸館

与那国織の産地を肌で感じたい方には、与那国島にある「与那国町伝統工芸館」がおすすめです。

与那国町伝統工芸館の所在地は、沖縄県八重山郡与那国町字与那国175-2。営業時間は平日8:30〜17:30・土曜8:30〜17:00で、毎週日曜日と正月が定休日。入場料は無料で、与那国町役場から徒歩約5分、与那国空港から車で約10分の場所にあります。
与那国町伝統工芸館では、織子さんの作業の見学も行っており、反物はもちろん、与那国織をあしらったシャツやお財布・バッグなどの販売も行っています。

実際に職人の手仕事を間近で見られる貴重な機会ですので、沖縄旅行の際にはぜひ足を延ばしてみてください。

まとめ

与那国織は、豪華さや派手さではなく、素朴で温かみのある風合いと、暮らしに根ざした用途美が光る伝統的工芸品です。過酷な自然と向き合いながら育まれてきた布には、島人の知恵と感性が詰まっており、今なお手仕事の文化を支える象徴として息づいています。

500年以上前から織り続けられてきた与那国織。一人の職人が島の植物で糸を染め、一か月かけて仕上げるその布は、量産品には出せない「生きた温度」を持っています。
日本最西端の小さな島から届く、手仕事の豊かさにぜひ触れてみてください。

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