大内塗とは?その魅力と歴史、特徴など詳しく解説(Shutterstock / contributor: 228987915)

大内塗とは?その魅力と歴史、特徴など詳しく解説

山口県山口市に古くから伝わる漆器「大内塗」をご存知でしょうか。
深みのある朱色と金箔の文様が織りなす、重厚で美しい佇まいは、一度目にすると忘れられない印象を残します。
室町時代に端を発し、600年以上の歴史を持つこの伝統工芸品は、萩焼・赤間硯と並ぶ山口県を代表する工芸として、現在も多くの人々に愛され続けています。

大内塗の歴史|「西の京」山口が育んだ漆の文化

現在「西の京都」と呼ばれる山口市は、室町時代の一時期、京都をしのぐほど栄えていたとされています。

その繁栄の中心にいたのが、大名・大内氏でした。

当時、中国・九州地方を統治し、中国・朝鮮との貿易で財を築いた大内氏は、後に「大内文化」とも呼ばれる時代を作り上げました。
この頃に漆塗職人が製作した漆器が、大内塗の始まりと言われています。
多々良姓大内氏の第24代当主・大内弘世は、周防・長門二国の守護大名として1300年中期に山口市に本拠地を築き、京都に倣った市街整備を行い、京都から多くの文化人や公家を受け入れる土台を作りました。
大内塗は朝鮮や明へたくさん輸出され、豪華絢爛で独特な文化のひとつとなりました。

その後、江戸時代に一度衰退したものの、明治時代になって復活し、現在まで至ります。
文久年間には岩本梅之進が再興を試み、明治初期には地方の物産として名を馳せました。
昭和10年には山口大内塗漆器業組合を結成し、大内漆器の高級化さらに輸出化を図りました。
漆塗りの先進地である輪島からも専門家を招き、苦難の時代を乗り越えた大内塗は、1989年に経済産業省により国の伝統的工芸品として指定され、名実ともに山口県を代表する工芸品となりました。

大内塗の三つの特徴|大内朱・大内菱・大内人形

大内朱|重厚感ある深い赤

大内塗の特徴のひとつは「大内朱」(おおうちしゅ)と呼ばれる深い赤色です。
赤と茶色の中間のような重厚感ある色味が、品の良さを醸し出しています。
渋みのある濃い朱色の地塗りと、下塗り・中塗り・上塗りの漆塗りで丈夫に仕上げているのが特徴です。

漆器全般に朱色は使われますが、「大内朱」はその中でも特に独自の深みを持つ色として知られています。

大内菱|家紋を宿す金箔の文様

朱色の漆を施し、雲形の中に大内菱を金箔で配し、秋の草花を添えて描く点を特徴としています。

「大内菱」とは大内家の家紋で、この意匠が施されることで、大内塗は他の漆器と一線を画す格調ある表情を持ちます。
金箔と朱漆の組み合わせは、室町の大内文化が培った華やかさを、現代にまで伝えています。

大内人形|夫婦円満のシンボル

大内人形は、大内氏中興の祖・大内弘世とお姫様との心温まるお話から生まれたといわれる、大内塗の技法をいかんなく発揮して作られた伝統工芸品です。
まるまるとしたお顔におちょぼ口、細く切れ長で垂れた目元が特徴で、現代で言う「癒し系」のお人形。
夫婦円満の象徴とも言われますが、おめでたいときやお祝いの贈り物にも使われています。
着物を表現するために数多くの色を使いますが、乾くまで重ね塗りができないため作業できるのは1日1色だけで、下地から絵付けまで完成まで数年かかるものもあるとされています。

大内塗の製造工程|木地師と塗師、二人の職人が紡ぐ手仕事

大内塗の職人は、木地師(きじし)と塗師(ぬし)に分かれています。
木地師は原木の乾燥から選別、加工という椀や人形の形を作る職人で、作品は1ミリ2ミリのズレで出来が変わってしまう非常に繊細な世界だとされています。
木材には製品に応じてチナイ・ケヤキ・トチ・ヒノキ・キリ・ホオなどがあり、伐採後数年かけて自然乾燥させます。
選別・荒削り・仕上げ削りの木地工程の後、下地工程だけでも傷見・くそ塗り・布着せ・下地塗り・水研ぎ・乾燥・研磨という多くの作業が必要です。
漆塗りの工程では、下塗り・中塗り・上塗りをするごとに乾燥や研磨を繰り返し行います。
こうした作業はほとんど手作業で行われ、完成までにかかる日数は約2ヶ月とされています。
手間暇がかかる根気のいる作業を経て、丈夫で変色しにくい大内塗に仕上がります。

現代の大内塗|受け継がれる伝統と新たな挑戦

昔ながらの器や箱はもちろん、最近では壁掛け時計やけん玉といった作品に加え、ピアスなどのアクセサリーやストラップなど、若者が手に取りやすい作品も多数作られています。
近年では、萩焼との伝統工芸コラボとして「山口陶漆器」という作品も誕生しています。
萩焼の器に大内塗を施すこの作品は、焼き物の強度に漆器の美しい光沢や手触りが合わさった新しい工芸品として注目を集めています。

一方で、伝統技術保持者数名で伝統が受け継がれていますが、後継者育成の問題を抱えています。
樹脂製品の普及により従来の漆器の需要が少なくなったことや、木地製作や漆塗りの工程の技術習得に息の長い時間が必要であることなどが課題とされています。

大内塗を体験できる場所も用意されています。

山口ふるさと伝承総合センターの「大内塗の箸作り体験」では、上塗りまで終わった箸に蒔絵と箔絵の作業を行うことができます。
中村民芸社の体験メニューには、オリジナルアクセサリー作りがあり、小学生以上が対象です。
室町時代から続く大内塗の世界を、体験を通じて身近に感じてみてはいかがでしょうか。

まとめ

大内塗は、室町時代の大内氏が築いた「西の京」山口の文化を今に伝える、歴史ある漆工芸です。
「大内朱」と呼ばれる深みのある朱色、金箔で施された「大内菱」の文様、そして愛らしい「大内人形」——その三つの特徴が揃ってはじめて、大内塗らしさが生まれます。
手作業による丁寧な積み重ねと、職人たちの長年の技が宿るこの工芸品を、贈り物や日常のインテリアとして取り入れてみると、暮らしにちょっとした豊かさが加わるかもしれません。
山口を訪れる機会があれば、ぜひ実物をその目で確かめ、手に触れてみてください。

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